一振りの真剣と包丁6本抱えパリへ向かう
文字通り「人生のアクシデント」が料理人清水忠明を誕生させたのである。18歳で料理の道に入ったときから、パリでフレンチの修業をするのだと決め、6年間で300万円を貯めた。 「いよいよパリに行くとなったとき、親父が600年も前の銘刀を差し出しましてね、これを持っていけって言うんですよ。くれるのかと思ったら150万円で買えと(笑)」父は居合いの達人。剣には造詣が深く、格別 の思い入れのある刀を息子に譲ろうというのである。断り切れずその銘刀を父から譲り受け、いざパリへ。

「成田で足止めですよ(笑)。真剣一振りに包丁6本持って飛行機には乗れない。結局、機長預かりで乗せてもらって行きましたが、パリへ着いてからもびくびく。何せ、刀を持った日本人がうろうろしているわけですから、お巡りさんに呼び止められても許可証もなければフランス語も話せないから申し開きはできない。無知ほど強いものはないですよ(笑)」パリに着いて3日目で七区の一ツ星レストランに職を得た清水だったが、8月になるとバカンスシーズンで1カ月休めと言われる。「手持ちの資金は底をついていたし、突然、休めと言われてもねえ(笑)。仕方ないので父から聞かされていたパリの剣道連盟を探し当て、とりあえず道場通 いをすることに」パリは思いの外、武道の盛んな街。日本からやって来た武道家は大歓迎だった。