雪の日の転倒でわかった自分の進む道
帰国後、東京店に6年、パリへ戻って1年半、トゥール・ダルジャンでの仕事は12年を超えた。このままずっとホテルでの仕事が続くと思っていた矢先、それは東京に大雪が降った日のことだった。
  「転機はやっぱり事故。今度は出勤するとき転倒して複雑骨折。その日は100人のパーティーが入っていて、これは大変なことになったと血の気が引いたよ」俺がいなけりゃと気負ってみても体は動かない。ところが、「ゆっくり休んでくれ」とねぎらわれたことで清水の気負いが消えていく。「何だ、結局、俺は歯車の一つにすぎなかったんだ、代替えはいくらでもいると気づいたとき、自分の店を持とうと思ったんですね」思い立ったら実行あるのみ。骨折休暇の間に物件を探し、神楽坂で見つけたレストランの経営者となる。

「店をオープンさせたものの、俺たち夫婦と弟夫婦、弟子ひとりの5人体制。みんな素人だからハラハラドキドキの毎日(笑)。シャンパンを開けて床をびしょぬ れにしたこともありましたね。以来、今日はシャンパンの注文がありませんように、と祈ったもんです(笑)」トゥール・ダルジャンのサービスとは大違いだが、味は本物。いつしかファンも付いてきて、雑誌やテレビで取り上げられるようになる。それからは大繁盛。オープン6年後には『ラ・トゥーエル』は本格フレンチの店として知られるようになっていた。昨年秋、千駄 ヶ谷にベーカリーとフレンチの店『ブルトン』を開店、『ラ・トゥーエル』をフランス修業を終えた元弟子に任せて、清水は再びゼロからのスタートを切るのだ。「まだまだ突っ走っていきたいからね。一緒に働きたい仲間をもっと増やしていきたいと思うんだ。」