料理は一対一の真剣勝負第二幕の開演へ
神楽坂で築いたすべてを後継者に託し、新たに千駄ヶ谷に店を構えて10カ月。清水の『ブルトン』は着実に浸透し始めている。「オープンした初日から毎日ディナーにみえるご夫婦がいらっしゃるんですよ。初日にお出しした牛肉の赤ワイン煮が気に入ってもらえたようで。当初はそのご夫婦一組という日もありました。それから毎日通 ってもらってありがたいやら緊張するやら。絶対に手は抜けませんから」
レストランはいつもひとりの客から始まる。客との一対一の真剣勝負が楽しい。勝つか負けるか、答えはない。清水の店には近くの調理師学校の生徒たちが見学に来る。そんなとき、清水はいつも「料理は積み重ねの世界なんだ。くじけそうなときもあるけど、どんなときでも夢だけは捨てるな」と口を酸っぱくして言う。
十代で味わったどん底の苦しみの中で、司馬遼太郎の『竜馬が行く』を読んだ。その中に『倒れるときは前向きに倒れろ』という言葉があった。以来、座右の銘となったその言葉を、明日の仲間となるはずの生徒たちに贈る。「俺もやっと人生のプレリュードが終わったばかり。本編はまだまだこれからだよ」ちなみに、父から譲り受けた例の銘刀は、件の警察署長に進呈してきたのだそうだ。
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